「FIRENZE IN TRANSLATION」を手がけた調香師に聞く。
新コレクション オードパルファムが生まれた背景とは?


この秋、ヴラニエス フィレンツェよりオードパルファムコレクション「FIRENZE IN TRANSLATION」が新登場しました。フィレンツェという街の佇まいや、1日の景色の移ろいを香りに翻訳するように作られた、全8種の香り。このコレクションを手がけたのは、調香師エレオノール・ブルニエ氏。2025年10月、表参道店オープンにあわせて来日したエレオノール氏に、コレクションの背景、素材へのこだわりなど、作り手としての想いを聞きました。
フィレンツェの街をミューズにした、8つの香り
——ヴラニエス フィレンツェ初となるオードパルファムコレクション「FIRENZE IN TRANSLATION」は、なぜ8種類の香りでデビューすることになったのでしょうか?
「じつは数字の“8”には、とてもフィレンツェらしい意味が込められています。世界遺産のフィレンツェの街を象徴する建築・大聖堂〈ドゥオーモ〉の八角形。その形は街の建築物にも共通していて、フィレンツェという土地を語る上で欠かせない要素なんです。だからこそ“8”という数字で、私たちのオードパルファムのファーストコレクションを構成することに自然と意味が生まれました。」
——今回、8つの香りで、フィレンツェという街の佇まいや、1日の景色の移ろいを表現されています。具体的にはどんなシーンから香りのインスピレーションを得たのでしょうか?
「そうですね。形のある建築物などだけではなく、今回のコレクションは“フィレンツェの一日”、時間経過をテーマにしています。朝起きて窓を開け、風が揺れる瞬間。昼の光。夕方の落ち着き、夜の気配――。そんなふうにそれぞれの時間が持つ、フィレンツェの街の詩的なイメージを香りに落とし込んでいます。朝から夜までの8つのポイントの美しい時を切り取り、それぞれ香りで体現したコレクションです。」


——フィレンツェの街は芸術、光、情景を含めて特別な美しさがありますよね。その街を切り取った8つの香りにはそれぞれに個性があると思うのですが、そのなかでも一番ドットール・ヴラニエスらしさを表現し、シグニチャーとなる香りはどちらになるのでしょうか?
「今回、8種類の中からひとつの香りを“これが代表”という位置づけにはしていないんです。どの香りもフィレンツェの生活、時間、景色を想起できるような、まさにフィレンツェの街をミューズとして発想した香りとなっています。香りはその方の感じ方によってストーリーが変わります。フィレンツェという街に訪れたことがある方もない方も、それぞれがフィレンツェを思い浮かべられるようなクリエイションにしていることが、今回のコレクションの特徴のひとつかもしれないですね。」


——ちなみに、エレオノールさんがよくまとうお好みの香りはありますか?
「どれが一番好きかと聞かれるのは、少し難しいですね。『どの子が一番?』と聞かれているような感じがします(笑)。私は基本的にオフィスに行く時は、香りを身につけません。でもオフタイムや週末などには、思い切って色々な香りを楽しむというライフスタイル。ある日は‘MATTUTINO〈マットゥティーノ〉’をまとったり、ある日は別の香りにしたり。どれが一番というよりも、私自身はそのときそのときの自分の気持ちで香りを選んでいます。週末には、自分が手がける新しい香りを試すこともあります。どんな香りの構成で、香りはきちんと調和しているのか、どのくらい香りが持続するのかなど、検証するような目線で選んでいます。」


——香りの持続性というキーワードが上がったので伺いたいのですが、今回のオードパルファム コレクションは、香りが長く続くように感じました。これにはドットール・ヴラニエスだけの秘密があるのでしょうか?
「これには大きく二つの側面があると思っています。一つは製法です。香りがつくられる過程がきちんとした工程を経て、香りに調和がとれているかどうか。たとえば美しい音楽をずっと聴き続けられるように、心地よく続く香りになっているか、という部分は、香りが長持ちすると感じられる理由のひとつだと思います。
もう一つは原材料の品質の高さ。原材料にどれだけ良いものを選べるかということは、香水作りには必須です。高価な原料も多くなかなか難しいことも多いのですが、常に最高品質の材料を探していい香りを開発したいと挑戦しているので、その側面もあって、持続性が高いものに仕上がっているのではないかと思います。」
——ドットール・ヴラニエスらしさは、いい素材、いい原材料、そしてそれらが生み出す心地よい香りのハーモニーから生み出されているんですね。
「原材料探しにはとても真剣で、その中から厳選したもののみをこだわって使っています。たとえば、‘MERIGGIARE 〈メリッジャーレ〉’に使用している「蜜蝋」は、イタリア国内から入手できる希少な素材を。また通常は食料品として捨てられてしまう穀物の「ふすま」から抽出したオイルを使用しています。パウダリーでウッディ、少し食欲を刺激するような美味しいそうなニュアンスがあるんです。また‘CAPOGIRO〈カポジーロ〉’には、南イタリア・カラブリア産の高品質なベルガモットを。どの素材も一般的な調香ではあまり使われないユニークなもの。これらを選び抜くプロセスに時間をかけてできたフレグランスだからこそ、持続性が高く美しい香りを生み出せているのかもしれません。」




——ブランドのバックグラウンドであるイタリアやフィレンツェという土地の文脈や文化を大切にした香りづくりをおこなっているのが印象的です。
「フィレンツェという街が、歴史的にものづくりと密接に関わる伝統の積み重ねがあります。もともと香水の街でもありますし、宝飾品もレザーも、ワインは手工芸とは違うかもしれませんが、人の技術が創り上げて醸し出すというところでは、香水と同じように並べていいのではないかと思います。職人たちの技術によって作られてきた「文化の土台」があるからこそ、原材料にアクセスできるネットワークも自然と存在していますし、街全体でもこういった産業を振興しています。ちなみに私たちのフィレンツェにあるオフィスの裏庭にはアイリスの特別区画があるんです。アイリスは非常に高価で現在はあまり使われていませんが、根を乾燥させてパウダーや香料にするという歴史があります。フィレンツェの土地そのものが、香りのアイデアや原料の源になっていますね。」
クリエイティブな香りは、クリエイティブに楽しんでいい!
——近年日本でも、自分の個性を表すものとして、フレグランス選びを楽しむ人が増えてきています。一方で、まだまだ「周りへどんな印象を与えるか?」というような、TPOにあった香り選びを重視される人も少なくないように感じています。
「日本の方が周りを気にされたり、きちんと場をわきまえたり、こういうバランスが正解という考え方をもっていらっしゃることがとても素敵だと思っています。一方で、私は調香師として、香りの楽しみかたについて、正解にこだわることも、間違った選択もないと思っていて。隣の人が眉をひそめても『え、なに?』と、自分の好きな香りを楽しんでしまうのもひとつの道だと思っています(笑)。香りに正解はないですし、正解にこだわる必要はありません。
そんな中でも、多くの日本の方に愛していただけそうなのは、‘MATTUTINO〈マットゥティーノ〉’でしょうか。オフィスシーンでも、自分だけでなく周りの人も心地よくいられることができる香りとしてもおすすめです。フィレンツェの朝をイメージした爽やかな香りなので、多くの人に受け入れられてもらえるのではないでしょうか。お仕事のあとや夕方以降の自由な時間には、‘INTRIGO〈イントリーゴ〉’。バラやレザー、ウードやムスクとしった香りのピラミッドで、奥行きのあるミステリアスな印象を与えてくれる香り。自分の個性を表現したいという人にぴったりです。」




——フレグランスの正しいつけ方が分からないという声もあります。おすすめの香りのまとい方ってありますか?
「たとえばですが、コートには‘INTRIGO〈イントリーゴ〉’を、実際に肌につけるのは‘PETALOSO〈ペタローゾ〉’と、まとう部分を分けるレイヤー使いを試していただきたいです。同じ場所に何プッシュもまとうよりも、つける場所を変えるレイヤリングはハードルも低く、好きな香りの組み合わせを楽しんでいただきやすいのではないかと思います。
新しい香りに挑戦したいときは、たとえばスカーフだけにつけるという方法も。香りのつけかた、レイヤリングは自由でいいんです。クリエイティブな香りなので、まとい方もクリエイティブであってほしいと思っています。」


——「クリエイティブに香りをまとう」ってとても素敵な香りの楽しみ方ですね。最後に今回の「FIRENZE IN TRANSLATION」コレクションを通じて、フィレンツェの文化がつまった香りを日本でどのように楽しんでほしいですか?
「今回のコレクションは、フィレンツェの街の物語を日本の方にお伝えすると同時に、日本の感性とフィレンツェの香りが出会う機会を提供したいです。たとえば、このコレクションの香りをまとうことで、旅行しているような気持ちになる方もいれば、ただ“いい香りだな”と楽しむ方もいると思います。香りが語りかけるストーリーを、日本の日常のなかで自由に感じていただけたら嬉しいですね。」




オードパルファムコレクション
「FIRENZE IN TRANSLATION 」全8種
100ml: 31,900円 40ml: 15,400円 15ml: 8,800円

