フィレンツェの時をまとう ― Firenze in Translation

最初にまとったのは、夕刻のアペリティーボを思わせるシトラスアンバーの「ティンティンニーオ」。撮影は、藤井夏恋さんが家族と訪れた宮古島で行われました。

「東京とはまた違う景色や温度感が、この香りとすごく合っていると感じました。夕方から夜へと移ろっていく、あの穏やかな時間帯に寄り添ってくれる香りですね」と藤井さん。

ビターオレンジとマンダリンが広がるトップノートの瑞々しさの奥に温かみがあり、気分を高めながらも心を落ち着かせてくれる香り。「家族との夕食の前につけました。みんなでおしゃべりしながらご飯を食べるのが好きで、その前のゆるやかな黄昏の時間に合うと思ったんです」。

スタイリングには、ミニマルなブラックドレスを選択。「香りにどこか大人っぽいムードを感じたので、シンプルなドレスをさらりと着るのが合うと思って」。肩の力を抜いたエフォートレスな装いが、香りとともに始まるリラックスしたひとときを予感させます。

「普段の自分とは違う、新しい香りに挑戦した感覚でした。つけた瞬間は新鮮で意外性があったけれど、時間が経つほど肌になじんで柔らかい印象に変わっていく。その変化が心地よくて、特に印象に残りました」と藤井さんは振り返ります。

藤井さんは、アーティスト活動をしていた頃にライブグッズとして香水をプロデュースした経験があるほど、根っからの香り好き。ライフスタイルの中で、香りは欠かせない存在だと言います。

「玄関には香水のコレクションを並べています。香水がないと不安になってしまうほど。つけることで前向きになれたり、リラックスできたり、その日のムードも変わる気がします。香りそのものの好み以上に、体温や体質との相性を大事にしていて、つけたときに“自分の香りになるか”を重視しています」

日常では、その日のスタイリング、気分、行く場所、時間帯によって香りを使い分けて楽しんでいます。「理想は3種類くらいに絞って使いたいのですが(笑)。好奇心旺盛な性格で新しいものに挑戦するのが好きなので、つい色々試したくなるんですよね」。

新しい香りに惹かれるタイミングは、「いつもの香りが自分に馴染みすぎて“普通”になったと感じたとき。定着しすぎるのが苦手で、香りとともに新しい自分に出会いたいんです」と語る姿が印象的でした。

 

次にまとったのは、緑の丘陵に広がる早朝の空気を思わせるスパイシーウッディな「カポジーロ」。

「第一印象は、一言で言うとすごくフレッシュ。宮古島の滞在先のまわりにグリーンが多くて、香りと風景がシンクロしている感じがありました。実際にこの香りをまとってビーチサイドを歩いたのですが、ただ歩いているだけで頭の中が軽くなってリセットされる、そんな感覚を覚えました」。

つけたのは、柔らかな光が差し始める朝の時間帯。「早朝にトレーニングしてシャワーを浴びた後、すぐにまとう香りとしてイメージしました。そのあと自然の中を散歩したくなるような、清々しさがありますね」。

 

現在、スキンケアブランド「NEROLI LABO」を手がける藤井さん。化粧水とクリームは無香料で、クレンジングには肌に優しい精油をほんのりブレンドするなど、香りへの美意識がさりげなく宿っています。「スキンケアシリーズとは別に、自分の香水もいつかプロデュースしたくて、今勉強中です」と笑顔を見せます。

印象的な香りの記憶を尋ねると、こんなエピソードが返ってきました。「夫と出会った頃に使っていた香水を久しぶりにつけたら、付き合いたての頃の気持ちが一気に蘇って。夫とふたりで懐かしく温かな気持ちになりました。意識しなくても記憶の扉を開いてくれる香りの作用って、本当にすごいですよね」

彼女にとって香りは、ファッションやジュエリーと同じ“自己表現”の延長にあります。「外出前には必ずトータルでスタイリングを考えるのですが、その中に香りも必ず含まれます。その日のコーディネートの色合いや質感、気分、会う人、出かける場所 すべてを思い描いたうえで、最後に香水で仕上げる。そうすることで“私らしさ”が完成して、自信にもつながるんです」

大阪府出身。2008年よりアーティスト、モデルとして活動を始め、ファッション誌、広告、映像作品など多彩な分野で活躍。2021年には、自身がクリエイティブディレクターを務めるファッションブランド「NEROLI」をローンチし、2023年にはスキンケアブランド「NEROLI LABO」をスタート。ライフスタイル全体を見据えたブランドディレクションを通して、独自の感性と美意識を発信し続けている。


「ティンティンニーオ」は、1日の終わりに訪れるアペリティーボの時間を思わせるシトラスアンバーのオードパルファム。沈む夕陽の下、テラスに響くグラスの軽やかな音と笑い声。その情景を、ビターオレンジとシチリア産マンダリンの香りが鮮やかに描き出します。レッドタイムとシナモンが温かみのあるスパイスを添え、バージニアシダーウッドとパチュリがまろやかなラストへと導く、スパークリングで芳醇な香り。

100ml: 31,900円 40ml: 15,400円 15ml: 8,800円

「カポジーロ」は、トスカーナの早朝に広がる美しさから着想を得たスパイシーウッディのオードパルファム。松の木立に囲まれた丘陵に満ちる清々しい空気を、ベルガモットとエレミの明るいトップが描き出します。ジュニパーやサイプレスのアロマティックなニュアンスが深みを重ね、ベチバーとサンダルウッドが凛とした余韻をもたらす香り。澄んだ静けさに思わず息をのむような瞬間を閉じ込めています。

100ml: 31,900円 40ml: 15,400円 15ml: 8,800円


INTERVIEW & TEXT MAKIKO AWATA